爆ぜて咲く

 2025年12月21日、近鉄奈良駅前において「山上徹也さんに温情ある判決を!集会&デモ」が行われた。主催は「奈良少年刑務所を宝に思う会」の寮美千子さんである。

 主催者は、奈良少年刑務所での授業を通じて、「加害者になる前に被害者であった」という青年たちと数多く出会ってきた経験を持つ。生育環境や社会環境によって犯罪に追い込まれる人々の存在に目を向けてきた寮氏は、山上氏が安倍暗殺に至った背景や、更生の可能性を考慮した温情ある判決を求めるため、この活動を行っているという。

 集会にはおよそ80名の市民が参加した。当初、警察からは集会地点での拡声器やマイクの使用を禁止されていたという。しかし、近くでゴスペルを歌うグループが活動しており、肉声では集会として成立しない状況であったため、たまたま参加者が持参していたトラメガを使用することとなった。

 集会では、主催者のほか、「旧統一教会問題を考える奈良の会」の会長、山上氏の減刑を求める署名活動を行っていた人物、山上氏の母親と同時期に奈良で統一協会に入信していた人物などが発言した。宗教二世という立場で直面してきた人生の苦しみや、統一協会に一度入信すると高額献金を強いられ続け、そこから抜け出すことがいかに困難であったかといった経験が共有された。

 また、ジャーナリストの浅野健一氏や、大和郡山市議の徳野衆氏によるメッセージの代読も行われ、統一協会と自民党の癒着がもたらしてきた政治的腐敗に対する抗議の声が相次いだ。

 デモは、近鉄奈良駅から奈良地方裁判所までの歩道を往復する比較的短いものとなった。観光客の多いエリアであったことから、多くの人々の注目を集め、興味を持って参加者に話しかけてくる観光客の姿も見られた。デモでは、山上氏が残したとされる「巨悪あり。法これを裁けず。」という言葉や、「カルト教団を利用した政治家を許さない」「山上氏に社会復帰の機会を」といったスローガンが掲げられた。

 この集会には、NHK、読売新聞、朝日新聞、共同通信、毎日新聞といった大手メディアの取材も入っており、社会的な注目度の高さがうかがえた。筆者自身もNHKの記者から取材を受け、山上氏が安倍暗殺に至った経緯を考慮した減刑の必要性や、山上氏の行為がもたらした社会的・政治的影響の大きさについて話した。しかし、現在に至るまで、これらのメディアはいずれもこの集会やデモについて報道していない。山上氏および統一協会問題をめぐる言説が、いかに報道の場で統制されているかを端的に示す事例である。

 山上氏による安倍暗殺は、統一協会による信者への人権侵害や高額献金の強制、違法な勧誘行為に社会的な注目を集めた。また、統一協会と自民党との強い結びつきによる選挙協力や金銭的支援といった問題を白日の下にさらした点において、「成功した」決起であったと言えるだろう。

 さらに、逮捕後3年以上にわたって公判が開かれなかった代用監獄制度の問題、政治家一人を殺害した場合に無期懲役が求刑されるという異様な重刑、傍聴が極端に制限されるなどの裁判所による妨害とも言える対応は、司法権力が振るい続ける国家的暴力のあり方を、現在に至るまで示し続けている。

 国家が個人の身体と時間を長期にわたって拘束し、透明性を欠いた手続きのもとで裁くことは、自由を基礎とする社会秩序そのものに対して敵対する行為である。リバタリアンの視点に立てば、国家が「公共の安全」や「秩序」を名目に権力行使を常態化させることこそが最大の暴力であり、その矛先は最も弱い立場に置かれた個人へと向けられている。

 安倍暗殺以降に明らかになった裏金問題や政治資金問題に端を発する自民党の支持率の低下から、いまに至るまで政治変動が続いている。これは国家と既成政党が長年にわたって蓄積してきた不透明な権力運用と癒着構造が、いかに脆弱で欺瞞的であったかを露呈させた結果である。山上氏の放った弾丸はいまでも日本社会を飛び続けている。この弾丸によっていかに権力を撃ち抜くかということは、今後の我々に委ねられている。

(河原木桃香)