ビットコイン・スタンダード・インスティチュートとは何か――貨幣制度と政治秩序の基盤を問い直す試み

 ビットコイン・スタンダード・インスティチュート(Bitcoin Standard Institute, BSI)は、ビットコインを単なる投機対象や新技術としてではなく、貨幣制度、さらには政治・社会秩序の基盤となりうる制度として捉え直すことを目的とした言論プロジェクトである。

 ビットコインをめぐる議論の多くは、価格変動や規制の是非に集中しがちである。しかし、より根本的には、貨幣制度は国家財政、金融市場、産業構造、さらには人々の時間感覚や行動様式にまで影響を及ぼす政治的制度である。BSIは、この貨幣制度と社会秩序の関係に焦点を当て、オーストリア学派経済学、政治思想、社会哲学、批判的実在論などの議論を参照しながら、ビットコインが提示する制度的可能性を検討してきた。

 Saifedean Ammousは『ビットコイン・スタンダード』(邦訳、練木照子)、『Fiat Standard』(未邦訳)において、法定通貨制度のもとで食料、エネルギー、科学、国家といった領域がいかに歪められてきたかを論じている。これらの議論は刺激的であり、貨幣制度の政治的帰結を可視化する点で重要な貢献をなしている。一方で、その説明は主として、法定通貨制度が人々の時間感覚を短期化させ、その結果として社会全体が近視眼的になる、というロジックに依拠している側面もある。

 BSIが今後目指すのは、ビットコイン・スタンダードにおける社会制度のあり方を、より強固な理論的枠組みで記述することである。ビットコインという「操作不能な貨幣」を前提としたとき、国家の財政運営や金利形成、中央銀行の存立意義、ひいては公共政策のあり方はどう変容するのか。これは単なる理想の提示ではない。現実の制度構造を冷徹に分析し、「貨幣の純化」がもたらす制度選択の帰結を、政治経済学の地平から記述する試みである。

 ビットコイン・スタンダード・インスティチュートは、特定の政策を即座に提唱する場ではない。しかし、貨幣制度を所与の前提として受け入れるのではなく、それが政治権力や社会秩序とどのように結びついているのかを理論的に明らかにすることは、リバタリアンにとって不可欠な課題である。ビットコインは、その課題を具体的かつ実在的な形で突きつけている。BSIは、その問題を引き受けるための思考の基盤を提供することを目指している。

(ビットコイン・スタンダード・インスティチュート)

編集注

 同記事は以下より閲覧可能。
https://note.com/bitcoinstandard/n/n1150e67ac59f