こんにちは、リバタリアン減税会です。わたしたちは8月18日に事務事業評価を見る会を行いました。本稿はそのレポートとなります。
事務事業評価とは
事務事業評価は、(地方)政府が行う事業の必要性、効率性、効果の評価を行うものです。日本の政策体系は、政策・施策・事務の階層構造を形成していることが多く、事務事業評価は主にその末端部にあたる事務レベルのものを評価します。
自治体の事務事業評価は公表が任意とされており、未公開の自治体が多く存在します。また、項目が自治体ごとに設定されており、自治体間の比較もままならない状況です。さらに、おおよそ評価とは言い難い杜撰な評価基準が採用されがちです。物事の実施はある目標を達成するために行われ、そのためにインプット(実施)を行い、アウトプット(実施の結果)が現れ、アウトプットによってアウトカム(成果)が生み出されます。例えば、渋滞を解消したいという目標があったとき、予算・人員の投入(インプット)→バイパス整備による通過時間減少(アウトプット)→渋滞緩和(アウトカム)というロジック・チェーンが評価では基本となります。しかし、事務事業評価はアウトカムの言及がないものや、アウトプットとアウトカムを取り違えるもの、インプットしか書いてないものもあります。よって、行政以外の人々が事務事業を吟味するのに「役立たず」であることも珍しくありません。しかし、自治体で実施されている多くの事務事業は、イデオロギーの左右を問わず信じられないほど無駄なものがほとんどを占めており、いかに課税や行政という仕組みが愚かであるかを私たちに示してくれます。
実際に見てみた:つくば市
見る会では実際にいくつかの事務事業評価を見ました。本稿ではその中の一部を抜粋してみなさんにお伝えします。
つくば市の令和6年度事務事業評価のホームページ:https://www.city.tsukuba.lg.jp/soshikikarasagasu/seisakuinnovationbukikakukeieika/gyomuannai/4/5/25986.html
つくば市の事務事業評価には人件費(※事務事業を担った職員の労働量を職員の給与で示したもの)の記載がありますが、何を実施したのか不明なものや事務事業に関与した団体が不明瞭なものがいくつかありました。例えば、市民部市民協働課が管轄する「146花と緑の美化活動事業」は、目的として「まちの環境美化意識を高めるとともに地域コミュニティの活性化を図る。」を挙げ、概要(取り組み内容)に「事業参加団体への花苗配布を春と秋に行い、各地域の公共的な空間を季節の花で飾り花壇を維持管理することで、市内の環境美化を行い、来訪者への歓迎の気持ちを発信するとともに、地域活動拠点の可視化と地域コミュニティの活性化を進める。」と記載があります。令和6年度の予算額は4,665,000円で、決算額(実際に使用した金額)3,202,000円、人件費は6,566,000円で、正職員従事割合は0.90人でした。ほぼ1人の職員が通年つきっきりだったことを意味します。評価指標は「各地区の公共的な場所に花を植栽し、花壇の維持管理をする活動に参加する市民活動団体等の数」としており、令和6年度の目標値155.0に対して実績(参加した市民団体の数)は176.0でした。成果は「事業参加団体による環境美化活動によって、地域の公共的な空間を季節の花で飾ることができた。」と記載があります。さて、これらを評価してみましょう。まず、この事業は目的が2つあります。環境美化意識の向上と地域コミュニティの活性化です。事業主体がどの自治体や事業体であれ、両目的が具体的に何を意味するのかは不明です。目的が不明瞭なものは手段や指標も不明瞭になりやすいです。つくば市によると、この2つの目的の指標は維持管理に参加した市民団体の数としていますが、これもよくわかりません。どのような団体が参加したのかわからないことに加え、155.0という目標値が目的に沿うものなのかどうかも分からないからです。極めつけは成果です。成果は結局のところ「花を植えた」であって、環境美化意識が向上したのか、地域コミュニティが活性化したのか、まったく不明瞭かつ、関連がないように思われます。そして、そもそも、320万円の決算が適切だったかどうかの考慮もありません。なお、つくば市はまだマシな方で、人件費の掲載すらないところも珍しくありません。
実際に見てみた:京都市
京都市の「令和7年度事務事業評価について」:https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000349544.html
京都市産業観光局「No.42市民生活と調和した持続可能な観光促進に向けた海外プロモーション強化事業」を見てみましょう。前提として、京都市は世界有数の観光都市であり、世界中の人々が訪れます。そのため、市内のいたるところでオーバーツーリズム問題が発生しており、騒音、渋滞、雑踏の混雑、満員のバスによって、市民の日常生活は虐げられています。当事業はその対処を試みているようですが、さっぱり理解不能です。では諸概要を見ましょう。事業概要は、
1 外有力メディアを活用した情報発信
政策面に関心の強い、政治や経済などの幅広い時事を扱う海外有力メディアを対象として、観光課題対策や京都観光モラル等の報道等につなげるための働きかけを行う。
2 海外インフルエンサーの発信力を活用した情報発信
宿泊日数が長く、消費単価が高い欧米豪、また、リピーターが多い台湾、中国、韓国を対象に、SNSでの強力な情報拡散が期待できるインフルエンサーを通じて、分散化の促進や観光課題対策に関する情報等を発信する。
3 中国(上海)における海外情報発信・収集拠点の運営
令和6年度に設置した上海拠点において、中国国内における京都への関心動向等の情報を収集するとともに、持続可能な観光に関する内容等の情報発信を行う。
事業目標は、
<実施成果(アウトプット)>
・ 指標:一般系メディア支援件数【数値目標:12件(数値目標の考え方:月1回程度の支援を想定)】
・ 指標:インフルエンサー投稿件数【数値目標:32本(数値目標の考え方:1地域当たり4本の投稿を想定)】
<事業効果(アウトカム)>
・ 指標:観光消費額(外国人)【数値目標:3,318億円以上(数値目標の考え方:コロナ禍前(2019年)より増加)】
令和6年度予算額は41,800,000円、同決算額は41,800,000円、令和7年度予算は41,800,000円でした。取組実績は、
(令和6年度)
政治や経済などの幅広い時事を扱う海外有力メディアを対象として、観光課題対策や京都観光モラル等の報道等につなげるための働きかけを行うとともに、海外インフルエンサーの発信力を活用し、京都の多様なエリアの魅力や京都観光に役立つ情報の発信を行った。また、中国(上海)に拠点を設置し、中国国内の情勢の情報収集を行うとともに、持続可能な観光に関する内容等の情報発信を行った。
1 海外有力メディアを活用した情報発信(掲載実績:12件 目標:12件)
2 海外インフルエンサーの発信力を活用した情報発信(投稿実績:47件、目標:32件。閲覧回数が100万回を超えた投稿もあり。)
3 中国(上海)における海外情報発信・収集拠点の開設(令和6年7月開設)
(参考)令和6年 観光消費額(外国人):8,522億円(令和7年度)
令和6年度に引き続き、政治や経済などの幅広い時事を扱う海外有力メディアを対象として、観光課題対策や京都観光モラル等の報道等につなげるための働きかけを行うとともに、海外インフルエンサーを招請し、京都の多様なエリアの魅力や京都観光に役立つ情報の発信を行っている。また、令和6年度に設置した上海拠点の運営を行っている。
1 海外有力メディアを活用した情報発信(件数:8件 令和7年12月末時点)
2 海外インフルエンサーの発信力を活用した情報発信(招請人数:5名 令和7年12月末時点)
3 中国(上海)における海外情報発信・収集拠点の運営
事業目標及び取組実績を踏まえた評価は、
海外有力メディアを活用した情報発信については、海外情報発信・収集拠点も積極的に活用しながら、粘り強く情報の働きかけを行い、令和6年度は、目標通り12件の記事掲載につなげることができ、京都観光モラルやマナー啓発、観光課題対策について認知度向上に寄与した。この中には中国のWEB媒体も含まれているが、上海に新たに設置した拠点を通じた取組の成果である。
また、海外インフルエンサーの発信力を活用した情報発信については、9名のインフルエンサーを招請し、InstagramやTiktok等複数のSNSへの投稿につなげることで、目標を超える投稿実績を達成することができた。
令和6年の外国人の観光消費額が目標を超える8,522億円となり、今後も外国人観光客の増加が見込まれる中、引き続き、観光課題対策等の本市が政策として伝えたい情報をより一層効果的に発信するため、海外有力メディアや海外インフルエンサー、海外情報発信・収集拠点を活用し、海外向け観光プロモーションの強化に取り組んでいく。
です。なお、人件費の記載はありませんでした。
おそらく、海外有力メディアを用いて京都市の観光課題や観光モラルの“報道”の働きかけ、海外インフルエンサーによる情報発信、中国に情報発信拠点を設置・運営がインプットあたるのでしょう。アウトプットの指標は、一般系メディア支援件数12件(毎月1回程度の支援)、インフルエンサー投稿件数32本(1地域あたり4本投稿)であり、アウトカム指標は、観光消費額(外国人)3,318億円以上となっております。完全に意味不明です。事業目的はタイトルにもあったように、市民生活と調和した持続可能な観光促進に向けた海外プロモーション強化だったはずです。いったいどこに市民生活と調和する要素があったのでしょうか。支援にせよインフルエンサーの投稿にせよ、量的側面しか指標になく、質的(つまり内容)側面は指標となっていませんので、実際に効果があったのかどうかはまったく不明です。アウトカムが観光消費額というのも輪をかけて意味不明です。市民生活との調和そっちのけのものであったとしても、観光消費は高めることはできるからです。“得”をしたのは海外インフルエンサーたちと中国拠点づくりに励んだ現地の企業(公司)だけなのではないでしょうか。さらに、このような事業に4100万円も毎年計上されています。
おわりに
リバタリアンの中心的テーゼは「課税は強盗」です。人々から同意なく強制的に財を得たからです。課税によって為される事業のほとんどすべてが辟易とするような害悪でおおわれています。事務事業評価は氷山の一角ではあるものの、政府の愚かさと課税の無益さを私たちに伝えています。
リバタリアン減税会では、今後も事務事業評価を見る会を催し、すべての課税を廃止する活動と広報を行います。興味がある方は、以下のURLよりディスコードにお越しください。
(リバタリアン減税会)
