創刊の目的

なぜ『リバタリアン』を発刊するのか

 リバタリアンの思想は世界で、そして日本で浸透している。しかし、リバタリアン同士のコミュニケーションの手段であり、また、新たなリバタリアンを産み出すためのリバタリアンの組織は、いまだに日本では存在しない。現在、必要なことは、リバタリアン同士のコミュニケーションを活発化させること、そして、リバタリアンを増やすことである。

 これらの問題の対処法の1つは、定期的に発刊される雑誌と、その雑誌を制作する組織をつくることである。『リバタリアン』は、リバタリアン思想に基づいた見解を提供し、リバタリアン間、そしてリバタリアンと非リバタリアンとのコミュニケーションの一助と なることを想定して発刊された。掲載される記事は、時事問題に対する応答だけではなく、リバタリアン社会の素描の構成も含まれる。また、リバタリアン協会の活動報告の場としても活用されるだろう。

リバタリアン協会の使命

 リバタリアン協会の使命は以下の4つだ。①リバタリアン思想とリバタリアン運動を研究すること、②それらを人々に流布すること、③リバタリアン間のコミュニケーションを活発にすること、そして、④新たなリバタリアンを増やすことである。

 リバタリアン社会の到来のために、過去そして現在の思想や運動 の探求は不可欠のものだ。そのため、我々はリバタリアン思想と運動を吟味しなければならない。ここでいう「リバタリアン思想と運動」とは、右派リバタリアニズムだけではなく、左派リバタリアニズムとリバタリアン社会主義も包含している。我々は、単に、(無政府)資本主義を研究するのではなく、リバタリアン libertarian という概念を探求しなければならない。政治思想の概念としてのリバタリアンは、社会主義的なアナキズムから生まれ、ヨーロッパ (主にスペイン内戦)で花開いた。右派リバタリアンにありがちな、 この歴史的事実の意図的な無視は看過できない。我々は、資本主義 者や社会主義者である前に、まず、(信念体系を持つ人という意味 での)リバタリアンでなければならない。よって、いわゆる「左派」、「右派」に拘泥するのではなく、リバタリアン思想と運動を探求求するのである。

 次に、リバタリアン思想と運動の流布である。単に思想や運動について考えを張り巡らすだけであれば、実際には困難だろうが、独りの人間の脳内で完結する。それ自体は非難されるべきことではな い。しかし、我々は個人であるとともに、社会生活を営んでいる。 脳内や仮想現実と異なり、実社会は自分の思い通りになるとは限らない。いや、ほとんどの場合、そうはならないだろう。少数派の我々は実社会において、味方を発見し、増やさなければならない。そうでなければ、現在の多数派の手によって、反リバタリアンな社会へ突き進まざるを得ないだろう。そのため、リバタリアン思想と運動を人々に流布しなければならない。

 (特に日本の)自称リバタリアンの多くは、身内同士で繋がりを持とうとしない。もしかすると、それはリバタリアンなる思想概念 がもつ特徴なのかもしれないし、既存の社会制度がそうさせているのかもしれない。原因は複数あるだろうが、最たる理由として、現在、緩やかにでもリバタリアンを連帯させる組織が存在しないことが挙げられるだろう。よって、我々は、リバタリアンの交流を促進するための諸活動を行う。

 最後に、新たなリバタリアンを増やすことについてである。従来通りの非政治的リバタリアンであれ、政治的リバタリアンであれ、 また、右派・左派・社会主義的なリバタリアンであれ、構わない。 とにかく、リバタリアンを増やすことが使命である。なぜか。私は リバタリアン社会に到達するために、どの方法が最善であるとか、より良いかについては、分からない。しかし、大方の方法に関して、ある程度の人数が必要と考えられるから、多種多様なリバタリアンを増やそうと決心した。

 以上がリバタリアン協会の主な使命である。

(前川範行)