Student for Liberty について

 皆さんこんにちは。Students For Liberty Asia-Pacificでローカルコーディネーターを務めております Hikaru Ito(いとうひかる)と申します。このたびはリバタリアン協会の機関紙『リバタリアン』に寄稿させてもらえますこと、とても嬉しく存じます。

 本記事では、① SFLの概要、②なぜリバタリアニズムをベースにした(学生の)団体が日本で必要なのかの2点を話します。特に②をメインに、SFLをどう根付かせていくかを焦点にします。

 数年前に、同組織が設立されていたと、地域マネージャーや私を誘ってくれた韓国の大学生から伺いました。その時は定着しなかったようです。投稿を見る限り直輸入ではなく、SFLの後援という形で国際交流系のインカレサークルといった形態をとっていたようです。おそらく、受け入れ側がそもそもリバタリアニズムを守り、促進する団体の存在を深く認知していなかった可能性が高いとみています。今回折角、私が引き受けたからには、草の根で定着させたいと強く思います。

Students For Libertyとは何か?

 現在私が所属しているStudents For Liberty(以下SFL)について紹介します。第一回のウェビナーでも紹介しておりますので、ぜひご覧ください 。

 Students For Liberty の設立経緯ですが、アメリカの大学の政治空間において保守・リベラルの二分論のなかで、リバタリアンの学生組織は存在せず、リバタリアンの学生は非常に孤独な存在であり、全米の大学を結び付けるネットワークの必要性が求められたという過去があります。実体としてはアメリカのNPO団体で、いわゆる 501(c)3 団体として設置されています。簡単に説明すると、審査基準が厳しいかわりに、課税が相当免除される団体です 。

 SFLは2007-2008年に北米で始まって以来、2018年にアジア太平洋地域、2021年にMENA(中東と北アフリカ)が開始するなど東アジアやロシア連邦を除きほぼすべての地域にネットワークができあがりました。そして、 2023年4月20日時点で日本3名(近々4名に)、韓国6名、台湾1名のメンバーで、2023年東アジアでの活動がついにスタートしました。

 

図1 SFLの分布

 SFLは2008年と比較的最近できた団体でありながら、リバタリアンの学生ネットワークのなかでは世界最大の団体、ネットワークです 。ビジョンとミッションを見てみましょう。

ビジョン
A Global Network of Leaders Advancing Liberty in All Aspects of Society.
社会のあらゆる局面から自由を求めるグローバルなリーダー達のネットワーク

ミッション
Educate, Develop, and Empower the Next Generation of Leaders of Liberty.
自由を求める次世代のリーダー達を教育し、育成し、力づける

 これだけを見ると自由を追い求めていれば、どのようなアスペクトでもよさそうです。しかし定義を確認すると、Advancing Libertyとはリバタリアニズムのプリンシパルを気づかせ(awareness)、受け入れさせ(acceptance)、実行させる(implementation)こととされており、あくまで基盤にあるのはリバタリアニズムの理念です。主な目的はリバタリアンを増やすことなので、SFLはリバタリアニズムについて知らない学生も対象としています。最悪リバタリアンにはならなくても、これから世界中で、各国内で活躍するだろう若い人材が、少しでも自由のマインドを持ってくれるだけでも十分な価値があります。

なぜ学生のリバタリアン団体が必要か

 ここからはなぜ私が日本においても学生のリバタリアン団体が必要だと考えたのかについて述べていきます。リバタリアン思想は、政治空間において、まったくなされていません。

 私は学部生の頃、政治家の方とお会いし、官庁訪問、公務員試験、政治サークル?に幸か不幸か一般的な大学生よりは携わることができました。そこで交流した彼ら/彼女らは、ほとんどが人格的にも優れており、私よりもよっぽど優秀な人たちばかりであり、それらの体験は私に素晴らしい学びをたくさんもたらしてくれました。しかし、不幸なことにどう税金を集めて(多くの場合、消費税は減税、法人税、所得税の強化)どう配るかということをその優秀な頭で考えるのです。このようになるのは、当然だと思っています。なぜなら、政治や行政に興味があるということは、基本的になにかが足りないという意識があり、「自分は○○をやりたい」という明確な意思を持った人が多いからです。ただ、権力機構の強大さや危険性は考えていないといってよいでしょう。

 私個人としては、リバタリアニズムの価値とはその寛容さ、多様性にあると考えています。人間は個々では不完全な存在であり、人々は強制ではなく、自発的な活動を通して補完し合いながら生きていくしかない。なぜ強制的に他人から強奪した金を使おうとするのか理解に苦しみます。こどもを始めから財源としてしかとらえない、税金を自分の金かのように語り、大盤振る舞いすることを嬉々として語ることは私の矮小な脳みそはとても理解できません。それらの実地体験を経て、私の中に危機感が生まれました。奇しくも前川範行氏が現在、緩やかにでもリバタリアンを連帯させる組織が存在しない と『リバタリアン』の創刊号で述べたように、リバタリアンの人間にも一定の基盤、組織が必要だと考えました。やはり、個人が徒手空拳で影響力を及ぼすことは難しいと思います。しかし、政党の学生部や政治系のサークルに対するカウンターパートとして緩い連合をつくることは、効果的であると考えています。また、リバタリアンな傾向を持った人はあまり政治、政策系の場には出てきません。しかし、私よりも資質のある人材が前に出ないと、自由社会の実現から遠ざかります。政府の規模と複雑性が大きくなればなるほど、有権者が投票箱を通じて政府の政策を支配するために知らなければならないことは多くなるため、政治に無関心でいることは、責められることでは全くありません。しかし、政治界隈では「若いのに政治に関心持っていて偉いねえ」に代表されるように、なぜか政治は徳の高いものであり、関わらない・興味のないことは愚かであるという風潮があり、それらに辟易してしまったのも、リバタリアンの団体が必要だと思った理由です。

SFLに加入する上での利点、今後の方向性など

 いくつか、利点を述べるとするならば、まず交友の幅が広がることです。すぐにとはいかないでしょうが、扉は開かれています。個人として全世界のリバタリアンと繋がことも可能ですが、SFLという団体を経由することで名刺代わりになることもあります。SFLから卒業生した人の集まりもあるので、卒業した後もどこかで役立つかもしれません。また、Eラーニングや、ウェビナー、研修旅行の体験などは今後どのようなキャリアをあなたが歩もうとも(政府セクターから民間企業、国際機関、NPOまで)有意義なものになると確信しています。

 また、一人で言論をするよりは、団体のなかであれば、まだ発言しやすいと感じてくれる方もいるだろうと思います。そういった方々に対しての代替案、プラットフォームなれば幸いです。そして、あわよくば外に出ていって色んな方々と議論を交わしていただきたいです。

 少なくとも現状のSFL EastAsiaはゴリゴリのリバタリアン団体ではなく、リーダーシッププログラムと、思想的基盤としてリバタリアニズムを内包する団体といえます。私個人もそこまでラディカルではないと自覚しています。

 Atlas Network に努めているSFL North Americaのオリジナルメンバーである友人にいわれたのは、「リクルートにおいて大事なのは、すべて一緒であることではなく、一つのトッピクで同意できれば十分」ということであり、アライアンスをつくることです。同意点は移民制度改革、ブロックチェーン、人権擁護、銃の保持かもしれない。要は、広く同意者を増やすことが団体として、運動として重要であるという指摘です。人数を集めるなら国際協力、交流できるといえば済むのですが、それは団体の理念としてはどうなのかと思っており、少なくとも立ち上げの段階では多少なりとも、リバタリアニズムに関心、理解のあるメンバーで構成しようと思っていました。しかし、入ってから少しでもリバタリアニズム成分?を吸収してもらうという方向性も考えています。SFLにとっての自由は主に、経済的自由(他団体との差別化のために強調したい点)、個人の自由(パートナーとのあり方から、日常生活の選択まで)、学問の自由(学生らしい観点であり、日本において左派系の教授に対して強調したい点)の3つが挙げられているものの、どのように自由を正当化するかは個々に委ねられています。例えば、韓国のメンバーは、「特にアジアでは経済に関心をもってくれる学生は少ないから、人権にフォーカスをするとよい」と言っていました。それも一つの手段であるので多様な価値観を取り入れ、規模を拡大していきたいと思います。このあたりが、リバタリアンの学生団体と銘打たれながら、日本で左派的と呼ばれるような人権擁護の活動や環境運動(あくまで Freemarket environmentalismの視座から)、女性の権利擁護(自由社会において当然)、国際連合、ヒューマンライツウォッチ、アムネスティインターナショナルにコミットするメンバーもいる理由です。それらを踏まえ、リバタリアニズムを知るきっかけをつくる団体というポジションがしっくりくると考えています。ゴリゴリのリバタリアン路線ではなく、あくまでリバタリアニズムをベースにゆるく人権擁護、国際的なネットワークとして、孤独を感じがちなリバタリアンのための一つのプラットフォームを提供する団体です。

申し込み方法、連絡先について

 最後に、コーディネータープログラムの申し込み方法についてお知らせします。いくつかのプロセスを経る必要があるため、私にメールを送っていただけると幸いです。

hito@studentsforliberty.org

 こちらの申し込みリンクと、詳細についてお知らせいたします。

https://studentsforliberty.org/asia-pacific/local

 面接の日程を書き込む箇所があるので、都合のいい日時を選んでください。アジア太平洋を担当しているマネージャーと面接になります。私もなるべく同席できるようにします。この記事を読んで Students For Liberty に少しでも興味を持ってくれた方、あるいは、もっと知りたいという方は連絡をください。また、トピックなどの募集もしているので、意見をお寄せいただくと幸いです。

 最後になりますが、リバタリアン協会さんとのウェビナーイベントも鋭意企画中です。リバタリアン協会を世界に広げていきましょう。イベントのレポートなども、こちらに載せられたら幸いです。

(いとうひかる)